石渡商店の想い
気仙沼の誇り、サメ文化を守り継承していくために―
地域と共に事業を発展させ、皆さまに喜んでいただける商品づくりに努めます。
より美味しく使いやすく
三陸の豊かな漁場に恵まれた気仙沼は、サメの全国の水揚げ量の80%を占める「サメの町」です。江戸末期にはフカヒレの製造を始めていたと伝えられ、明治時代には肉をすり身にしてちくわを作るなど、古くからサメを活用する文化が受け継がれてきました。
石渡商店の創業は昭和32年。初代(石渡正男)が神奈川県からフカヒレ加工業を目指して移住し興した会社です。当時捨てられることが多かった小さなヒレまでを丁寧に加工し商品化するなど、より美味しく、使いやすくなるようサメ一筋に研究・開発を重ねてきました。
「海の恵みを大切に、食文化を創造する」ことが創業以来のテーマ。例えば中華料理の高級食材だったフカヒレを一般家庭用の商品として開発。世界でも類を見ない商品と話題になりました。また天ぷらや茶わん蒸しなど和食に取り入れる提案をするなど、生み出した独自の加工技術やアイデア溢れる商品は、国内外から高い評価をいただいてきました。中国の来賓を迎える政府の晩餐会や天皇即位を祝う宮中晩餐会にも使用されるなど、気仙沼産フカヒレの価値を高め、魅力を伝えてきたという自負があります。
震災からの再起
技術や商品に磨きをかけ、原料・素材はもとより加工商品が広がりを見せたころ、東日本大震災の津波により社屋、工場を失いました。あまりの被害の大きさに一時は事業の継続は難しいとも考えましたが、フカヒレは気仙沼の大事な産業であり文化であること。そして何より祖父と父がつくり上げてきた会社を存続させたいと再建を決意。
取引先の皆様やお客様など全国からたくさんの温かいご支援をいただき、従業員一同の懸命の努力もあって、2012年9月に新社屋での生産をスタートさせることができました。
震災後はフカヒレ以外にも、地域の食材を生かした商品開発に力を入れています。地域の方々の協力をいただいて開発した「完熟牡蠣のオイスターソース」は、浜の人だけが知る本当の旬の時期のカキを丸ごと使った、これまでにない味わいのオイスターソースとして国内外で好評を博しました。
地域に対して1つの企業ができることは小さいかもしれません。だからこそ地域の方々とさまざまな場面で連携し、互いに最善を尽くすことで地域全体の力を高めていく…。復興の歩みの中で学んだことをもとに、石渡のDNA(開発力と技術力)を生かし、気仙沼の豊かな海や食材の素晴らしさ、商品にかける思いを世界に向けて表現できたと思います。
私たちは、震災だけでなく世界情勢や景気の波など幾度となく訪れたピンチをチャンスにと励んできました。今後も安全を徹底し、安心で美味しく豊かな食文化に寄与して参ります。海の恵みであるサメを活かしきる。創業当時からの思いを込め、多くの皆様の健康で幸せな暮らしに貢献したいと願っています。
株式会社石渡商店 三代目 代表取締役 石渡久師